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オタクです

山下七海さんに救われるまで

2015年3月8日が人生の転機だった。
私はWake Up, Girls!山下七海のソロでイベント、やらせてください!に文字通り命を救われた。

色々あってそれまで躁鬱病を拗らせており、鬱になったり躁になったり大暴れした結果リアルでもネットでも人間関係を滅茶苦茶にし、アルバイトも辞め、ストレスの過食で丸々と太り、あとはいつ自殺するかという散々な状況だった。
そんな自分がたまたま見かけたのがWake Up, Girls!ソロでイベント、やらせてください!のネット配信だ。
WUGのアニメは放送当時から追っており、知人の熱心な布教活動によってラジオや生放送、イベント等の情報も自然と入ってきていた(その知人もソロイベ前に縁が切れてはいたのだが)。
それまで声優に声以外の魅力を見出だしていなかったため、ライブとなってしまうとリアルのイベント性が強くあまり興味を持てていなかったのだが、昔からキャラや声優によるカバーソングが大好きという趣味があった。
少し調べてみると、ソロイベではカバーソングを何曲も歌っているらしいこと、また青山吉能さんがEGOISTの曲をカバーしていること等、興味を惹かれる情報がいくつも出てきた。
「配信かあ……お金もそんなにかからないみたいだし、家で見られるならいいかな」
その程度の気持ちで、そしてせっかく見るならというくらいの感覚で、トップバッターを努めていた吉岡さんの公演を見た。
それが驚くほど、衝撃的なほどに楽しかった。
それまでWUGのメンバーは、みにゃみは天才、みゆちゃんはツインテが可愛い、奥野さんは身長が低くて可愛い、という印象しかなく、正直なところ吉岡さんはあまり視界に入っていなかった。なのにどうだ?あまり気にしていなかったはずの彼女が歌って踊っているだけで、こんなにも楽しくなり、わくわくさせられるのか?
自分はライブに行ったことがない。だからかもしれない。初めての経験だから?いや、それでもネットで誰かが歌って踊っている姿なんてこれまで何回も見たはずなんだ。とても不思議だった。
今思えばこの時にはすでに、彼女たちに夢中になっていた。

それから順番に終演後の配信を追っていった。
そしてみにゃみの公演。これがとんでもなかった。
なんとこれまでのWUG曲を自分で繋げて、メドレーを作ってきたのだという。
盛り上げるところを弁えており、回し方も上手い、その上WUG全曲メドレーってこれもうトリでいいでしょう。逆に田中美海さんのこの公演後にトリをつとめるの、無理だろう。トリは誰だっけ?ああ、山下七海さんだ。妙に顔評価が高いけれど、そうでもなくないか?結構丸いし、お芋ちゃんという感じが抜けない。運動神経もあまりよくなかった気がする。アニメをあまり知らないからか、声はともかく、台詞のイントネーションがおかしいことがあった。ぴんとこない。何より、個人的に嫉妬していた。理由はお察しだ。崇拝していた神様がななみん推しだった。苦い記憶だ。アホらしい、嫌な、感情的すぎる嫌悪感だ。
可哀想だと思った。こんなにも完璧な公演の後にトリをつとめないといけないのなんて可哀想。できないだろう。きっと、あっちのほうが良かったと言われるのに。
今思えば本当に勝手な、最低な哀れみを向けた。鼻で笑っていた。今考えると謝罪したい気持ちにしかならない。
そして、山下七海のソロでイベントやらせてくださいが始まった。

今でも覚えている。
もうしばらくお待ち下さい、と書かれた、久海菜々美ちゃんの絵が映された画面。
かかしのように立てられた、スポットライトを浴びている紫のリボンの衣装。
アナウンスにざわつくオタクの声。
照明が落ちた中で叫ばれる、ななみーん!という野太い声。
冷めた目でそれらを見ていた。その瞬間だった。

シャン!シャン!シャン!シャン!

小さな影にスポットライトが当たる。オオカミとピアノが流れ始める。
片耳だけがあざとく折られた、ウサギ耳のカチューシャ。ゆるくまとめられた、二本のみつあみ。位置がずれている襟。赤いチェックのスカート。
見るもの全てを魅了するバニーガールの姿で、山下七海さんは、その場にいるだれより楽しそうな笑顔で歌っていた。
トリなんて可哀想。
あの公演の後なんて。
できないだろうな……。
そんな風に思っていた、心配ではない、ざまあみろとでも言うかのようなどす黒い憐れみがボロボロと消えていった。
あんなに完璧だと思わされた田中美海さんの公演の後で、こんな表情ができるのか?こんなに楽しげに、なんの心配もなさそうに、時折ファンにサービスしたり、マイクを向けては、でも私のほうが幸せ!と叫ぶようにまた歌声を乗せられるのか?
衝撃的だったという言葉ですら生温かった。
圧巻だった、その様子は。
その後もトーク(お便り)コーナーや、練習を重ねたというマジックを田中美海さんをゲストに披露して。あれだけ完璧だと思っていた田中美海さんに、前の公演に潰されることなく、山下七海のイベントとして二人でキャラソンを披露した。
そこからのライブコーナーは何回見たかわからない。当時は七海さんの次の言葉を言えるほど聞いたし、見直した。
ふわふわ時間staple stable
ふわふわ時間のア~ドッキドキ~!とかいう謎コール。今日もハートズキズキ、の焦がれるような苦し気な姿。ラップいくよっ!と軽やかに跳ねる声。寝ちゃお寝ちゃお寝ちゃお、ななみタイムだ~~~!!に大盛り上がりするファンの声も。
今ならまだ間に合うから撤退したほうがいいよ、もっと勘違いしてしまう前に……。の歌声に、ドキリとさせられたこと。歌詞の前後を少し間違えていたこと。片思いをして一喜一憂しているとわかるふわふわ時間の歌詞とはまた違う、こちらに入り込んでくるような、知っていけたら、知っていってもらえたらと願う歌詞。
ラストの曲は、当時大好きだったアニメのOPだった、光るなら。

え~ほいじゃ~ぁ ここからはblogでも告知していた やっちゃいます 私がしっとり歌うから~、その後…。覚えてきた?歌える?おーけー?よっしゃー!ぼんやりとだが、そんなことを曲の途中で話していた。

「君だよ 君なんだよ 教えてくれた 暗闇は終わるから…………いくよー!」

この瞬間だった。人生が変わった。
これまで、煌めくどんな星もステージ上の山下七海さんを照らしていた。それは変わらない。けれど、自分の姿もよく見えた。
七海さんが眩しかった。緊張なんて感じさせず、トリなんて不安は微塵も抱かせず、それどころかファンを楽しませるだけではなく、ファンより自分が誰より一番楽しいのだと、自分が今一番幸せなのだという顔で笑っていた。私は幸せ!あなたはどう?と問いかけてくるような、なんの歪みもない純粋さがあった。
自分で自分を幸せにできる人。島田さん家のまゆちゃんが話していた。自分は幼い頃からずっと、誰かの迷惑になりたくない、が第一で生きていた。そうなりたかった。いつしかそれは、一人で大丈夫な人になりたい。自分で自分を幸せにしたい。それからなら、誰かと生きていけるのかもしれない、そういう願いに変わっていっていた。忘れていたそれらを、思い出させられた。
七海さんは、自分で自分を幸せにできる人なのだ。自分で自分を幸せにして、それから私たちに、ファンにその光を向けてきて、あなたはどう?って聞いてくる。それから、楽しませてくれる。幸せにしてくれる。そういう優先順位が、正解が、本能的に選べる人なんだ。
七海さんに照らされてよく見えた自分自身の姿は、これで満足だからもう死のうと思うにはあまりにも醜かった。

公演終了後、感情の奔流に耐えられず風呂場に向かい、湯船につかりながら滅茶苦茶に泣いた。悔しさだったと思う。あんな人間がいること、自分がそうでないことの悔しさ、悲しさ、衝撃と、感動。
滅茶苦茶過ぎる感情を涙にして流し終えてみると、とてもすっきりした気持ちで、ああなりたい、と思った。
七海さんとの距離は、とてつもなく遠かった。
七海さんみたいになりたい。あんな人になりたい。自分で自分を幸せにできる人になりたい。
もう十分だと思っていたけれど、あんな風に、少しでも変われれば。何かがどうにかなるかもしれない。
光るならを口ずさんだ。七海さんが歌わなかった、客席に話しかけていた部分の歌詞。

導いてくれた光は 君だよ
つられて僕も走り出した
知らぬ間にクロスし始めた
ほら 今だ ここで 光るなら

今だ。
ここなんだ。
つられて、走り始めるんだ。
七海さんは教えてくれた。
暗闇は終わるから、と歌ってくれた。

そこから一年、wugの活動を追いながら、これまで一切してこなかった身なりを整えるところから始まり、大嫌いな運動や食事制限で脂肪を落とし、人間の見た目になろうと努力した。
2ndツアー、劇場版試写会、接近イベント……歯を食い縛りながらそれらを蹴り、最低限のラインに立つまで七海さんには会わないのだと決めて走っていた。
そして2016年、ソロでイベントやらせてくださいの第2回目。そこで初めて、私はwugの、山下七海さんのイベントに参加することができた。
あのとき、山下七海さんは、ぼんやりと画面を見ていただけの、捻れた自分を導いてくれた。
諦めるなら、せめて、あんな風になってからにしよう。それでも駄目なら、そのときに考えよう。そんな風に、光に向かって歩くことを選択させてくれた。道標のように光ってくれていた山下七海さんには、本当に感謝しかない。
2015年、あれから楽しいこと、悲しいこと、色々あったけれど、とてもいい4年間だったとはっきりと言える。あのとき死ななくて良かったと。
まだまだあんな風にはなれないし、自分で自分を幸せにはできていない。自分のことは嫌いだし、しんどいことばかりだとも思ってしまう。けれど、あのときの自分より、今の自分のほうがましだと思えている。すごいことだ。
山下七海さんを好きになって良かった。山下七海さんの好きなところ、無限にあるから一生語れるのだが、自分語りという名目でこの記事を書いているのであえて触れないでおく。一つ言うなら芋とか言ってた過去の自分を殴りたいくらい可愛いんですよね。顔が好きだからファンやってるわけではないが、流石にあのときの自分見る目なさすぎる。
なんにせよ、これからもずっと好きで、目標にして、憧れて、救われていくのだろうなと思う。それから、応援していくことで少しでも彼女の助けになれたらとも思う。おこがましいか。

そんな感じで、長くなりましたが山下七海さんに救われるまで。でした。ちゃんちゃん。
山下七海さんが存在する時代に、この世界に生まれてきて良かった、七海さんの存在、家族、全ての人類に感謝。